合成樹脂精密金型製作及び金型メンテナンス対 応,精密ギアを中心としたエンジニアリングプラスチック金型製作,合 成樹脂精密射出成形品の製造及び組立て並びにレンズ部品の組立てであ るが(乙28),原告は,自らのホームページにおいて,平成13年8 月にP17工場からGL生産事業をP1に移管した旨表示しており,P 1に製造部門が存在することを自ら明らかにしている。
(乙2) (3) 前記(2)の認定事実を踏まえ,以下,前記(1)の判断の枠組みに沿って検 討する。
アそこで,まず,前記(1)ウ(ア)ないしの各要素について検討すると, (a)販売製品製造のための生産設備(工場建物,製造設備等)の整備の状 況(前記(1)ウ(ア))についてみるに,P10工場に係る工場等につい ては,前記(2)イ(ア)のとおり,P1がP9合作社から賃借しており,製 造設備については,前記(2)イ(ウ)のとおり,P1が,P10工場での加 工生産に必要な生産設備を無償で提供し,しかも,この設備の所有権はP 1に帰属しており,(b)販売製品製造のための人員(監督者,技術者,単 純労働者等)の配置の状況(前記(1)ウ(ア))についてみるに,P10 工場の従業員の法律上の雇用主がだれかは必ずしも明らかでないものの, P1は,前記(2)キ(ア)のとおり,本件各年度計画書において,人員配置 に関して,P11本社及びP10工場の各製造部門ごとに,監督者や技術 員から製造・組立作業員,さらには通訳,掃除員等に至るまで,詳細かつ 具体的な計画を策定するとともに,上記人員配置計画に対する配置の実績 についても把握・管理しており,同キ(イ)のとおり,P10工場における 給与体系の決定及びP10工場従業員の個別具体的な人事評価まで行って いるほか,同カ(イ)bのとおり,P1がP10工場名義に送金した金員の 中から従業員の給与が支払われており,(c)販売製品製造に係る原材料・ 補助材料等の調達の状況(前記(1)ウ(ア))についてみるに,前記(2) イ(ウ)b(b)のとおり,P1が無償ですべての原料・補助材料等を提供す ることとされていた。
以上によれば,P1は,P10工場における販売製品製造のための生産 設備(工場建物,製造設備等)の整備,人員(監督者,技術者,単純労働 者等)の配置及び原材料・補助材料等の調達等(前記(1)ウ(ア)ないし )のすべての面において主体的に関与していたものということができる。
イそして,上記アのP10工場における製品製造のための生産設備の整備, 人員の配置及び原材料・補助材料等の調達等へのP1の関与の状況(前記 (1)ウ(ア)ないし)を踏まえて,P1の設立の目的(上記(1)ウ(イ)< A>),P10工場における人員の組織化,事業計画の策定,生産管理の策 定・実施,生産設備の投資計画の策定,財務管理の実施,人事・労務管理 の実施等へのP1の関与の状況(上記(1)ウ(イ)(a)ないし(f))に ついて検討すると,次のとおりである。
(ア) P1の設立の目的
P1は,前記(2)ア(ア)のとおり,設立時の事業計画において,P1 1本社を管理拠点とし,P10工場を製造拠点とした上で,P10工場 機能を製造部門と位置付けるとともに,P1の董事長,総経理及び董事 会の下に,P11本社管理部とP10工場とを一体として組織化するこ とが計画されている。
本件合弁契約においても,同(イ)のとおり,東莞 市に委託加工工場を新設する旨記載されている部分もあるものの,その 前文において,香港国内に精密合成樹脂製品の製造販売及び金型の製造 販売を主目的とする新会社としてP1を設立する旨も記載されている。
そして,P1は,同(ウ)のとおり,香港の商業登記簿において,その「業 務性質」につき製造業を意味する「MFG」(Manufacturing)と登記 し,そのパンフレットにおいても,その製造技術,製造工程,品質管理 等についてP10工場の写真とともに紹介するなど,P10工場をP1 1本社と並ぶ一体の組織として扱っていることのほか,同(エ)のとおり, P1設立の5年後の金型工場規模拡大実施計画書中の「職務分掌」にお いても,およそP10工場で製造行為を行うに当たって必要と認められ るすべての職務が網羅的かつ詳細に記載された上,これらの各業務を所 掌する各製造部門の責任者の大半は,原告からP1に出向しαに居住す る社員が充てられていることからすると,P1は,その設立の当初から, P10工場における製造行為全般の統括・管理を行うことを当然に予定 していたものと認めるのが相当である。
以上のことからすると,P1は,P11本社及びP10工場を一体と して運営し,射出成形品及び金型の製造販売を行うことを目的として設 立され,事業展開を図ることを予定していたものと解される。
(イ) P10工場の人員の組織化へのP1の関与の状況 P1においては,前記(2)ウ(ア)のとおり,P11本社及びP10 工場が,組織上,董事長及び総経理の下に,一体のものとして構成され, P10工場については。
製造,組立て,販売,品質保証,財務等の各部 門に分けられた上,業務内容に応じて細かく階層化されていること, 董事長に原告の代表取締役(当時)が就いていたほか,総経理及び副総 経理,P11本社の会計管理課長(後の財務部長),P10工場の部長 以上の管理職の大半に原告からP1に出向しαに居住する社員が就いて いたことからすると,P1は,その董事長,総経理,副総経理及び自ら の社員たるP10工場の管理職等を通じて,P10工場の製造業務を掌 握・管理し,同工場の製造業務に従事する人員を組織的に統括していた ものと解される。
また,前記(2)ウ(イ)のとおり,P1は,P10工場においてISO 規格の認証を自ら取得することを計画し,総経理,副総経理,品質保証 部長等の各主要部の長に対して品質管理及び品質保証並びに環境管理に 係る職務分担を明確化し,品質環境マニュアルを策定する等の作業を経 て,そのころ,ISO9001及びISO14001の認証を取得して おり,P10工場における品質管理及び品質保証並びに環境管理を組織 的に達成するために,原告からP1への出向者を配置しており,P1は, ISO規格の認証を通じても,P10工場の製造業務に従事する人員を 組織的に統括していたものと解される。
(ウ) P10工場の事業計画の策定へのP1の関与の状況
P1は,前記(2)エ(ア)のとおり,本件各年度計画書中の「方針実施 計画書」において,中期構想を示し,経営方針を策定し,顧客関連プロ セス,設計・開発プロセス,生産プロセス等の観点から多角的に前年度 実績の検証と改善課題の定立を行うなどして,P11事務所及びP10 工場を一体のものとして,各年度の事業計画を策定していた。
(エ) P10工場の生産管理の策定・実施へのP1の関与の状況 前記(2)ウ(ア)のとおり,P10工場の部長以上の管理職の大半に原 告からP1に出向してαに居住する社員が就いていたことに加えて,P 1は,前記(2)エ(イ)のとおり,本件各年度計画書において,主要(重 要)プロジェクトを策定し,P11本社及びP10工場の各製造部門に ついて,重点施策,目標,スケジュール等を決定し,その内容は,P1 0工場については,生産計画・効率,品質管理,納期管理,材料管理, 製造コスト管理,新事業展開等の生産管理の重要項目が網羅されている こと,また,同(ウ)のとおり,製造各工程に関して,コスト削減,生産 効率向上,製品・材料に係る在庫金額削減,品質向上・維持,個別原価 の見直し・改善,原価改善等につき,合理化計画を策定していたこと等 からすると,P1は,P10工場における生産管理を主体的に実行して いたものということができる。
(オ) P10工場の生産管理の投資計画の策定へのP1の関与の状況 P1は,前記(2)オのとおり,本件協議書等に基づき,精密プラスチ ック用金型等の製造の用に供する機械設備を自社の所有のままP10工 場に設置しているが,これらの製造設備等に関し,本件各年度計画書の 「設備計画表」のとおり,各年度ごとに,P10工場の各製造部門の設 備投資計画を定めており,また,P1における定時株主総会においては, P10工場での精密プラスチック用金型等の製造に係る収支を含んだ営 業報告,決算報告及び利益処分案の承認等が行われるとともに,P10 工場への設備投資計画,生産計画等が議案又は報告事項とされている。
(カ) P10工場の財務管理の実施へのP1の関与の状況
P1は,前記(2)カ(ア)のとおり,本件各年度計画書において,P1 1本社とP10工場を一体のものとして扱い,得意先別売上計画を立て るのみならず,前年度の実績又は見込みを踏まえて,P10工場におけ る各製造部門ごとに,直接費,間接費及び共通費並びにその細目に区分 するなどし,各製造部門ごとの原価管理に基づいて損益計画を策定し, また,同様の方法で,総発生費用計画の策定を行っている。
また,同(イ) bないしdによれば,P1からP10工場側へ送金された金員につい ては,P1の総勘定元帳上,「外注加工費」等と委託加工費を示す勘定項 目として記載されておらず,中国小口現金勘定へ振り替えられた後,さ らに,「P10 EXPENSES」(P10経費)へ振り替えられた上,P 10工場における製造行為に関する中国工場の従業員給与その他P10 工場における製造経費が,P1の経費として処理されていること,こ れらの経費の中には,本件各契約書上,P1が負担するものとされてい るものと,P1の負担とされていないものとが混在して記載されている ことが認められ,P10工場の側で多額の会計処理を要する場合等に は,P1への請求及びこれに対する総経理の承認等が必要とされるなど, P1は,P10工場に係る資金の管理を行っているものと認められる。
そして,P1は,同(ウ)のとおり,P10工場に設置した機械設備につ き,固定資産台帳及び財務諸表上も,自社の固定資産に計上し,減価償 却を行い製造原価に算入するにとどまらず,P10工場の各製造部門の 原材料費,労務費等の製造経費についてもP1の製造原価として経理処 理している。
上記のとおり,P1がP11本社とP10工場を一体のものとして扱 った上で,損益計画及び総費用発生計画を策定・管理していたこと,P 1からP10工場側へ送金された金員についても,P1の総勘定元帳上, 中国小口現金勘定,さらに,「P10 EXPENSES」(P10経費)へ 振り替えられる処理がされた上,P10工場における製造経費が,P1 の経費として処理されていること,本件各契約書上,P1が負担するも のとされている経費と,P1の負担とされていない経費とが混在する形 で総勘定元帳に記載されていること,P1がP10工場における資金管 理をしていたことからすると,P1は,P10工場に関する財務管理を 行っていたものというべきである。
(キ) P10工場の人事・労務管理の実施へのP1の関与の状況 P1は,前記(2)キ(ア)のとおり,本件各年度計画書において,人員 配置に関して,P11本社及びP10工場の各製造部門ごとに,詳細か つ具体的な計画を策定しており,前記(2)キ(イ)のとおり,P10工場 における給与体系の決定及びP10工場従業員の個別具体的な人事評価 まで行っており,同キ(ウ)のとおり,P10工場における工員の募集・ 採用についてもP1が最終的に策定した規定に基づき行われ,募集・採 用に関する一定の場合には総経理の許可が必要とされ,さらに,就業規 定等のその他内部規律に関する規定もP1の総経理の決裁によるもので あり,その修正の可否についてもP1の董事会により決められていた。
また,P10工場における給与の支払についても,同カ(イ)dのとおり, P10工場管理部人事課員がタイムカードに基づき計算した金額をP1 に請求した後,P1の総経理の承認を得た上で行われていた。
上記のとおり,P1が,P10工場に関して,製造行為に必要な人員 配置を計画し,工員の採用規定を策定し,給与体系・人事評価システム を整備して,労務の対価の支払に先立ち自社の総経理の承認を得させて いたことなどからすると,本件協議書の記載上は労働力を提供するのは P7公司とされているものの,P1は,その実質・実体においてP10 工場の人事・労務管理を行っていたものというべきである。
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